プランナーズ・ハイ

プランナーズ・ハイ

 映像制作というものは脳内、まずプランニングや設計から始まる。ご多分に漏れず七転八倒するわけであるが、これがまた不思議なもの。大抵の場合、思考が進むに連れて苦しさが増してくるけど、やがてそれが快感に変わっていく。ググってみるとこの状態は、脳内がモルヒネ同様の効果があるβ-エンドルフィンという快感ホルモンで満たされているらしい。なんだかよくわからないけど、それが積み重なると必ず至福の時が訪れることは直感的に理解できる。得意先に認められる瞬間である。そんな経験が多少なりともあるからこそ、大抵の苦労には耐えられるのかもしれない。


それにしても、いったいこのエネルギーはどこからくるんだろう。黒澤明さんは、執筆を始めると1日も休まなかった。倉本聰さんは、抜きん出るには睡眠時間を削るなどの負荷が必要とおっしゃる。宮崎駿さんは、仕事中お弁当にかける時間は昼夕それぞれ5分だけ、三谷幸喜さんは休日を仕事で過ごしてらっしゃるという。
こんなの他人に勧められるわけないけど、妄想の中で巨匠たちのお言葉をいただき、勝手に励ましてもらった。私もかつてマイペースと称して自分勝手に時を繰り、またテレワークをいち早く導入して空間をも支配し、ぼっち居酒屋でも仕事していた(しかしそのおかげで妻と出会えた)。また一歩、働き方を改革して巨匠たちの領域に近づけたと、ひとり悦に入る。


なにごとも習慣のように繰り返し、その集大成が人間であると、ずいぶん前からアリストテレスも説いておられる。なにしろ映像制作は楽しい、このまま延々と繰り返していきたいところである。何度も息切れしそうになるけれど、今までの糧を駆使して繰り返す。こんな繰り返しこそが、後にエクスタシーとなるのである。このために今までやってきたといっても過言ではない。特にプランニングなど、スタートからフィニッシュまで担える立場だと顕著である。プランナーズ・ハイ、この仕事に就いて良かったと思えるひととき。

Text by
IMクリエイティブ本部
プロデュースグループ小野 雅史